管工事をハブとした国際都市の中古住宅設備へのフォーカス戦略|電柱のない目抜通りのMixed-use Tower

不動産建設のデジタル化が遅れているのは高度な複雑系問題であるから
小売や製造とは異なり、建設業界のデジタル垂直統合は世界各国で苦戦が続いている。デジタル垂直統合でもニッチSaaSでも倒産や撤退が相次ぐ。唯一成立しているのはCADなどの設計系である。テクノロジーの導入とデジタルバリューチェーンの垂直統合について、建設業は他のSoftware Eats Everythingの対象産業に劣後している。しかしこれは不動産や建設業がIT化していかないということの証明にはならない。むしろ、建設のデジタル化は問題が最後に解けるようになる複雑系になる可能性が高い。
建設業においてゴールドの物性をもつ物質はどれか
このような複雑系の市場を制圧するには既存市場に転がっている手段を集めるのではなく、わずかに収集できた知識から演繹し、数理モデルを組み立て、位置ポテンシャルにおいてどこに向かうかのゴールを決めることが重要だ。
例えば既存のゼネコンは協力会社の集まりを作り協力会社の管理においてSaaS導入を進めている。しかし、これができるのはあくまで大きくなったあとに扶養家族のように面倒をみる外部会社の社員ができるということであり、それは受注能力ができてからの話なので、中小事業者が協力会社会を一生懸命作ったとしてもブレイクスルーすることはできない。
どの市場を独占するかを決める方が手段を考えるより実用的である。そしてその仮説が正しければ現実が動く。建設業において黄金の物性を持つ物質は国際都市におけるMixed-use Towerである。
Mixed-use Towerとは
商業施設(ショップ、レストラン、オフィス、ホテル、病院、スポーツ施設など)と居住区(マンション)が一体となった超高層建築物は、一般的に「ミクストユース(Mixed-use)」型タワー、あるいは「商住複合タワー」などと呼ばれる。シンガポールでもマリーナ、香港でもセントラルには住むということに必要なあらゆる資源が集約されたMixed-use towerが成立する。これは日本で言えば「ヒルズ」系であったり、遠くから見えるタワー群のエリアである。Mixed-use Towerが成立する街は軍事的進行がむずかしく、熱源、電力、水、ガスといった資源供給が安定し、コンテナが通ることのできる港があり、膨大な通信帯域を賄うことのできる海底ケーブルハブがある。
このような集約施設は平時は経済ハブ、戦時はシェルターや司令塔などのデュアルユースになるにとどまらず、その周辺にタクシーやオンラインデリバリーの普及していく都市の重心となっていく。さらに天皇陛下、総理大臣、大統領や各国要人輸送道路、戦時の航空機滑走路としても使われるので、デュアルユースどころかトリプルユース、マルチパーポスになるのである。
人口はどう動いていくか
都市に人が集まっているのは偶然ではない。陸運、海運、空運の要所が歴史的経路依存性によって開拓される。そして山があり、平地がある、「水」を蓄え、水を配ることのできる土地に人は定住する。水、電気、ガス、熱源、多様なヘッジを効かせたインフラストラクチャによりユーティリティを供給できる都市インフラの上に複合商業施設やSグレードビル、タワーマンションが建設される。
ここで産業用の商業施設やSグレードビルは皆の憧れであるとともに、シニョレッジを前提としてハイプ競争が起こる「負け組」ゲームとなってしまう可能性が高い。わかりやすいがために新規参入者が多いのが「大きな建設」である。一方「小さな建設」だとしても新築は政府の住宅ローン補助や銀行の超低金利融資を当てにするため経済的合理性では動かない領域である。
真の独立、自立を実現するためにはあくまで経済合理性と予測可能性が成り立ち、需要が一定または衰退だとしてもネット参入者がマイナスである市場を狙うべきである。
なぜ国際都市の中古住宅設備なのか?
TANAAKKファシリティーズでは、上記条件のもと、国際都市の中古住宅設備メンテナンスにターゲットを絞っている。なぜ国際都市なのか?
時代が変わっても住宅はなくならない、国際都市には人が集まり続け、田舎からは人が減り続ける。国際都市の相続税は高く土地は必ず次の代で放棄され、細分化される。もともと持つ土地を数代にわたり維持することができるとしたらそれは価値が増えない地方においてであり、国際都市の目抜通りの土地を相続税を支払いながら維持することはできない。
したがって区分所有がすすむ東京都中央三区(港、千代田、中央)を中心とした国際都市圏には、ベッドタウンにおける大規模発電施設と大規模地下インフラを土台としたタワーマンション経済圏が拡張する。
そしてマンションのライフサイクルにおける総コストに占める主役は新築費用ではなく、維持費用である。ざっくり総ライフサイクルの80%以上は維持コストである。つまり、部屋の住宅空間のメインは外壁や躯体系ではなく内側の住宅設備である。
上水道(貯水槽)、下水道(排水)、空調配管、電気設備、家具、家電、内装仕上げ、塗装、消防設備などがこれにあたる。
“住戸の内側”に存在する工種のうち、更新頻度と支出額が大きいものが管工事を中核とした5つの隣接工種である。これは国内で法律的に定義される29工種のうちわずか5工種であり、そのなかでも優先は水回りを中心とした管工事であり、管工事と接続するハブ隣接的資格として、防水、電気設備、内装仕上げ、塗装や、消防設備、天井作業(高所作業)、アスベスト調査、エレベーター保守がある。この中から製造メーカーに近いエレベーターや、非常時が主であり大きなアップサイドが取りづらい消防設備は外して良いとすると、ターゲットとする5工種は管工事、防水、電気設備、内装仕上げ、塗装となる。
電柱のない目抜通りのMixed-use Tower
タワーマンションに住んでいる人は現在そこまで多くなく、歴史は20年くらいだろう。タワーマンションは建設されすぎていて将来ゴーストマンションになり空室が出ると考えている人が多いかもしれない。しかし我々の予測は逆である。効率的に都市人口を増やそうとすれば、すでに人口許容力のあるダム、発電所、送電設備、変電所、地中設備が必要となり、インターナショナルラグジュアリーメゾンが立ち並ぶような「電柱のない目抜通りのMixed-use Tower」を新たに作るには資本の集中力が必要である。
すでに国際都市化し、周辺都市と比べて比較優位で成長している地域は、100年単位で人口が集まり続ける可能性が高い。そのような都市で経済合理性が働くのは商業施設ではなく、区分所有の住宅なのである。そこは単一のUltimate Beneficial Ownerはおらず、占有権が最も優位に働く場所である。

