建設業の根拠法、種別と必要人員資格について

1. 設立趣旨
建設業法(昭和24年法律第100号)は、日本における建設業の適正な運営を確保し、工事の適正な施工を保証するために制定された法律。主な目的は以下のとおり:
- 公共の福祉の確保
- 建築物やインフラ工事の安全性と品質を確保する。
- 適正な施工と工事の適切な履行を確保する。
- 建設業者の適正な競争の促進
- 建設業の許可制度を設け、不適格業者を排除する。
- 適正な請負契約の履行を促す。
- 建設業者の資質向上
- 技術力・経営力の向上を図るため、技術者の資格制度を導入。
- 建設業許可に資本要件を課すことで、財務的に健全な業者を育成。
- 消費者・発注者の保護
- 不適切な契約や施工による被害を防止。
- 建設業法違反に対する罰則や指導を設ける。
2. 建設業の業務種別と必要資格
建設業法では、建設工事を29種類に分類し、各業種において適切な技術者が配置される必要がある。
業種 | 業務内容 | 必要資格(主任技術者・監理技術者) |
---|---|---|
土木工事業 | 道路、橋梁、河川工事など | 1級・2級土木施工管理技士 |
建築工事業 | 建築物の新築、増改築 | 1級・2級建築施工管理技士、一級建築士、二級建築士 |
大工工事業 | 木造建築物の施工 | 1級・2級建築施工管理技士、建築大工技能士 |
左官工事業 | 壁・床の塗装、モルタル仕上げ | 1級・2級左官技能士 |
とび・土工・コンクリート工事業 | 足場組立、コンクリート打設、解体工事 | 1級・2級とび技能士、1級・2級土木施工管理技士 |
石工事業 | 石材を使った建築物・構造物の施工 | 1級・2級石工技能士 |
屋根工事業 | 屋根の葺き替え、雨漏り修繕 | 1級・2級建築板金技能士(屋根) |
電気工事業 | 電気設備の設置・修理 | 電気工事士(第一種・第二種)、電気施工管理技士 |
管工事業 | 給排水・空調・換気設備工事 | 1級・2級管工事施工管理技士、配管技能士 |
タイル・れんが・ブロック工事業 | タイル貼り、レンガ積み | 1級・2級タイル張り技能士 |
鋼構造物工事業 | 鉄骨構造物の建設 | 1級・2級鉄骨製作管理技術者 |
鉄筋工事業 | 建築物・橋梁の鉄筋組立 | 1級・2級鉄筋施工技能士 |
舗装工事業 | 道路・駐車場の舗装 | 1級・2級舗装施工管理技士 |
しゅんせつ工事業 | 河川・港湾の浚渫工事 | 1級・2級土木施工管理技士 |
板金工事業 | 屋根、ダクト、外壁の金属加工 | 1級・2級建築板金技能士 |
ガラス工事業 | 窓ガラス・ショーケースの施工 | 1級・2級ガラス施工技能士 |
塗装工事業 | 建築物・機械の塗装 | 1級・2級塗装技能士 |
防水工事業 | 雨漏り防止・シーリング施工 | 1級・2級防水施工技能士 |
内装仕上工事業 | クロス貼り、床仕上げ | 1級・2級内装仕上施工技能士 |
機械器具設置工事業 | 発電機・エレベーター設置 | 1級・2級管工事施工管理技士 |
熱絶縁工事業 | 断熱材の施工 | 1級・2級熱絶縁施工技能士 |
電気通信工事業 | LAN配線、監視カメラ設置 | 第一級陸上特殊無線技士、電気通信工事施工管理技士 |
造園工事業 | 公園・庭園の施工 | 1級・2級造園施工管理技士 |
さく井工事業 | 井戸掘削 | さく井技能士 |
建具工事業 | ドア・窓の設置 | 1級・2級建具施工技能士 |
水道施設工事業 | 上水道工事 | 1級・2級土木施工管理技士 |
消防施設工事業 | 消火設備・警報設備設置 | 消防設備士(甲種・乙種) |
清掃施設工事業 | し尿処理施設の建設 | 1級・2級管工事施工管理技士 |
3. 建設業法に基づく許可制度
建設業を営むには、一定の条件を満たし、国土交通大臣または都道府県知事の許可を受ける必要がある。
許可の種類
- 国土交通大臣許可
→ 2つ以上の都道府県に営業所がある場合 - 都道府県知事許可
→ 1つの都道府県内に営業所がある場合
許可要件
- 経営業務の管理責任者の配置
- 営業所ごとに専任技術者の配置
- 財産要件(自己資本500万円以上など)
- 欠格事由に該当しないこと
4. まとめ
- 建設業法の目的は、安全性・品質の確保、適正競争の推進、業者の資質向上、消費者保護。
- 建設業は29業種に分類され、それぞれ適切な**資格者(施工管理技士、技能士など)**が必要。
- 許可制度があり、国土交通大臣または都道府県知事の許可が必須。
建設業主要資格について
日本の建設業界では、多くの専門資格が存在し、それぞれが特定の業務や技術分野に対応しています。しかし、弁護士が税理士や社会保険労務士の資格を兼ねるような、複数の専門資格を包括する資格は、建設分野では一般的ではありません。
一級建築士は、建築設計や工事監理における最高位の資格であり、建築物の設計、工事監理、確認申請など広範な業務を行うことができます。しかし、施工管理や特定の技術分野に関する資格(例:施工管理技士、技能士など)を自動的に兼ねるものではありません。各資格は、それぞれの専門分野に特化した知識と技能を証明するものであり、業務内容や責任範囲が異なるため、個別に取得する必要があります。
ただし、一級建築士の資格を持つ者は、その専門性と経験から、関連する他の資格取得において一部の要件が緩和される場合があります。具体的な包含関係や資格取得の要件については、各資格の認定団体や関連する法令を確認することが重要です。
また、建設業の許可に関しては、専任技術者や監理技術者として認められるための要件が定められており、特定の国家資格や実務経験が必要とされています。建設業界では各専門分野ごとに資格が細分化されており、特定の資格が他の複数の資格を包括するケースは稀です。資格取得を検討する際は、各資格の要件や業務範囲を十分に確認し、必要に応じて複数の資格を取得することが求められます。
主な業種に必要な資格とその保有者数について
1. 土木工事業
- 必要資格:
- 1級土木施工管理技士
- 2級土木施工管理技士
- 難易度:
- 1級:難易度高
- 2級:難易度中
- 取得者数:
- 1級:総取得者数 約35万人(2021年)
- 2級:総取得者数 約25万人(2021年)
- 最新年度の新規取得者数:
- 1級:年間約1万人
- 2級:年間約1.5万人
2. 建築工事業
- 必要資格:
- 1級建築施工管理技士
- 2級建築施工管理技士
- 一級建築士
- 二級建築士
- 難易度:
- 1級建築施工管理技士:難易度高
- 2級建築施工管理技士:難易度中
- 一級建築士:難易度非常に高
- 二級建築士:難易度中
- 取得者数:
- 一級建築士:総取得者数 約37万人(2021年)
- 二級建築士:総取得者数 約60万人(2021年)
- 最新年度の新規取得者数:
- 一級建築士:年間約8,000人
- 二級建築士:年間約1万人
3. 大工工事業
- 必要資格:
- 1級建築施工管理技士
- 2級建築施工管理技士
- 一級建築士
- 二級建築士
- 木造建築士
- 建築大工技能士
- 難易度:
- 建築大工技能士:難易度中
- 取得者数:
- 建築大工技能士:総取得者数 約5万人(2021年)
- 最新年度の新規取得者数:
- 建築大工技能士:年間約1,200人
4. 左官工事業
- 必要資格:
- 1級建築施工管理技士
- 2級建築施工管理技士
- 左官技能士
- 難易度:
- 左官技能士:難易度中
- 取得者数:
- 左官技能士:総取得者数 約3万人(2021年)
- 最新年度の新規取得者数:
- 左官技能士:年間約800人
5. とび・土工・コンクリート工事業
- 必要資格:
- 1級建設機械施工技士
- 2級建設機械施工管理技士
- 1級土木施工管理技士
- 2級土木施工管理技士
- 地すべり防止工事士
- 基礎施工士
- とび技能士
- 難易度:
- とび技能士:難易度中
- 取得者数:
- とび技能士:総取得者数 約2万人(2021年)
- 最新年度の新規取得者数:
- とび技能士:年間約600人
6. 石工事業
- 必要資格:
- 1級土木施工管理技士
- 2級土木施工管理技士
- 1級建築施工管理技士
- 2級建築施工管理技士
- 石工技能士
- 難易度:
- 石工技能士:難易度中
- 取得者数:
- 石工技能士:総取得者数 約1万人(2021年)
- 最新年度の新規取得者数:
- 石工技能士:年間約300人